2012年12月16日日曜日

クリスマスイルミネーション

我が家のモミの木

つくば駅周辺のイルミネーション 

 パリ凱旋門シャンゼリゼ通りのイルミネーション

  つくばエキスプレスのつくば駅周辺は毎年クリスマスシーズンにはイルミネーションが飾られる。今の時代LEDが普及しその豪華さは電球時代とは比べものにならないくらいあでやかな世界を作っている。

  ヨーロッパでは各家庭でクリスマスイルミネーションを飾ることが多い。ヨーロッパの冬は日が落ちるのが早く、長い暗い夜を楽しむ工夫の一つがクリスマスイルミネーション。特に有名なのがパリの凱旋門シャンゼリゼ通りのクリスマスイルミネーション。ドイツ在住時代には車でパリを訪れることが多々あったが、15年ほど前にその光景を写真におさめている。当時は電球であった。しかし当時からこのイルミネーションは鮮やかで華々しいものであった。今ではLEDにとってかわりさらに豪華極まりないものになっているものと思う。

  最近では日本でもイルミネーションで家を飾っているのを見かけ、ヨーロッパとまったく同じ雰囲気となっている。夜歩いていてもよそのお宅の飾りを楽しみながら歩くことも多い。これもLEDの普及が大きな役目を果たしている。LEDの作る世界が人々を楽しませている。

  本日は東京に出向き選挙に行った後、恒例の第九交響曲を東京池袋芸術劇場で楽しんだ。今年はいつもの日フィルであるが、指揮者はコバケンではなく井上道義であった。井上道義は神戸に住んでいた時、京都市交響楽団の指揮で聴いて以来であった。10数年前と同じようにエネルギシュで加えてメリハリの利いた指揮であった。

  今年も無事過ごせると思っていたが、1ヶ月ほど前に夜中ベッドから降りるときに床のスリッパで滑って背中を強打し、肋骨を折ってしまった。夢うつつの中での出来事であった。1週間は歩くのも痛く大変であったが、その後痛みも和らぎようやく正常な生活に戻った。気持ちは若いつもりであるが、体はすでに老化していることを知らされた。これぐらの怪我で済んだことを幸いとして、動作はゆっくりと確実にすることを心がける必要があると反省している。

2012年10月12日金曜日

ナノカーボンの時代へ

 カーボン素材と言えばダイヤモンド、黒鉛、カーボンブラックなど昔から世界で広く使われている。ダイヤモンドは装飾の他、工業的にも研磨材や切削工具など多くの用途に展開され、また黒鉛は鉛筆の芯、カーボンブラックはタイヤなどの補強材に使われカーボン素材は今までも材料の世界で重要な役割を演じてきた。

18世紀後半に始まった産業革命以来、19世紀は鉄の時代といわれた。そして20世紀初頭まだ高分子という概念のない時代に初めての人造繊維であるレーヨンが発明され高分子時代の幕開けとなった。1920年には、ドイツのシュタウディンガーが高分子の存在を唱えたが認められるところとはならなかった。高分子の存在の証明とその発展を決定的にしたのがデュポン社のカロザースによるナイロンの合成である。

20世紀はこの合成高分子という新しい素材の発展した時代でもあり、特に戦後石油化学を土台にした有機合成高分子材料が続々と発明され、私もその分野の一つである合成繊維に関連する技術開発に従事するという時代を過ごしてきた。

仕事に従事した時にはすでに衣料繊維としてのアセテート、ナイロン、ポリエステルが広範に普及し、そして産業資材繊維としての高強力ナイロン、HMLSポリエステル、またメタ・パラアラミドに代表されるスーパー繊維と合成繊維の技術開発の歴史をそのまま体験した。

一方では、20世紀後半にはカーボン繊維の開発も並行して進められた。しかしカーボン繊維は軽量で高強力ではあるが製造コストが高いことがネックとなり、最初は宇宙ロケットの素材など特殊な用途に限られ産業として確立するのには時間がかかることになる。

コスト高のこの素材はまずは民生用としてゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途に展開されたが、事業自体は赤字が続く。このため世界中の多くの企業がこの分野に参入したが耐えきれず、生き残ったのが日本の企業という歴史である。

日本企業は繊維構造欠陥部を減少させる製造技術の開発、生産性向上を図るなど地道な技術開発を続けた。また用途展開として軽量化の効果の最も出る航空機部材への展開を図り、ようやく事業としても成り立つようになった。このように21世紀のカーボン素材の時代への橋渡しの重要な役割を演じたのが日本企業であることを認識したい。

このような背景の中で、20世紀末には新しいカーボン素材としてナノカーボンが発見された。1985年にはフラーレンが、1991年にはカーボンナノチューブが発見され、そして2005年にはグラファイトからグラフェンをとりだすことに成功した。続々と新しいナノカーボン素材がこの世に出てきている。この21世紀は従来のカーボン素材・カーボン繊維に加えてナノカーボンの時代の様相を呈している。

その中で、カーボンナノチューブについては1991年の飯島博士による発見以来まだ大きな産業には至っていない。特にその特性が顕著な単層カーボンナノチューブについてはその製造が難しくコストも膨大で実用化にはまだ時間がかかるとされている。

このため、2010年から国のプロジェクトとして単層カーボンナノチューブの製造技術開発、用途開発を促進させるため技術組合単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)が設立されている。すでに各企業にサンプル提供を開始し実用途に結び付けるべく努力がなされており、2016年の実用化を目指している。加えてグラフェンについても製造技術と応用展開技術の開発が進められている。

将来の社会変革に伴い、例として電気自動車、燃料電池自動車、超小型自動車、エコシップ、小型ジェット、介護ロボット、工場農園などの分野が成長することが予想される。これら分野を支えるエネルギーディバイス(電池、キャパシタ類)、タッチパネルなどの透明導電膜、アクチュエーター、車体・飛行機・風車などの軽量構造体、LED用高熱伝導材料などにナノカーボン素材が使用される可能性が強い。

資源開発の面でも海に囲まれた日本では深海での資源開発が脚光を浴びており、これには深海ロープなどのケーブルが必要となり単層カーボンナノチューブが使用される可能性を秘めている。

そしてこのケーブル技術の延長線上には本年発表された大林組の宇宙エレベーター構想にも関係してくるものと思われる。計画では2050年には実現とのことであり、21世紀の半ばには新しい宇宙の時代になることを示唆している。

日本からナノカーボン産業の創生が実現出来ることを期待し、特に単層カーボンナノチューブプロジェクトの重要性を感じる今日この頃である。
 

2012年5月6日日曜日

単層カーボンナノチューブの可能性を求めて

     カーボンナノチューブの未来(TASCカタログより)
 
1. 蜘蛛の糸

  「カンダタという男が地獄で血の池の中で咽びながらもがいているのに、お釈迦様が天国で気がついた。この男人を殺したり家に火をつけたり色々悪事を働いたがたった一つ、善いことをしたこととして、小さな蜘蛛が一匹、路ばたを這って行くのを見て早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、“いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いないとして急に思い返して、とうとうその蜘蛛を殺さずに助けてやったことを思いだした。それで天国から蜘蛛の糸を垂らしたところこの男はこれによじ登り地獄からの脱出を図った。」

  これは有名な芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」の一部要約である。その結末は、カンダタがこの蜘蛛の糸で地獄から極楽へ行けるかもしれないと登り始めたが、その糸の下にたくさんの罪人が登ってきて結局切れてまた地獄に落ちたという。物理現象としては蜘蛛の糸の強力では不足していたとのお話と理解する。小説ではカンダタが下からついて登ってくるたくさんの罪人を振り落とそうとした瞬間蜘蛛の糸は切れたということで、芥川龍之介は人としての生き方を伝えたかったものと思う。

 
2.繊維の歴史
                                                                                                                                           
  ところでこのような糸の材料である繊維の歴史を見ると、もともと衣服のみならず産業資材としての用途も長い歴史がある。その一つがロープ、タイヤコードのような線状の材料である。絹、麻、綿、羊毛などの天然繊維から100年ほど前にレーヨンという化学繊維が発明されその用途も広く拡大した。戦後は石油化学の発展によりナイロン、ポリエステル、アクリルの合成繊維が世界中で使われることになり大きな産業の一つとなった。さらに近年このような有機高分子化合物の大成としてパラアラミド繊維、超高重合度ポリエチレン繊維のようなスーパー繊維が使われるようになり、その機能を生かした用途も拡大し世の中の役に立っている。
 
3.単層カーボンナノチューブ(単層CNT)
 
  蜘蛛の糸はナイロンの数倍の強度を持っているといわれているがこのレベルの強度はすでにスーパー繊維の領域となっている。しかし、小説の世界とはいえカンダタのような体験を回避できる材料はこの世には存在しないようである。地獄に落ちたものは永遠に天国に登る手段はないということである。
 
  しかし今、その手段になりそうな素材が出現している。1991年、イギリスの科学雑誌「Nature」に発表されたカーボンナノチューブ(CNT)である。日本の飯島澄男博士がその詳細構造を世界で初めて明らかにし、その存在を明確なものした。もともと電子顕微鏡の権威で原子の規模までその顕微鏡写真に撮ることにも成功した研究者である。その後世界中の科学者・技術者がその製造方法、応用などの研究をしているが20年も経過してもまだ本格的な実用化には至っていない。
 
  CNTは単層と2層以上の多層からなるチューブ状の6炭素原子結合のナノサイズの材料であり、その中で多層CNTは比較的生産がしやすく一部市販されている。しかし、高強力などの特性を極度に発揮するには単層CNTが最も適している。今まで単層CNTについては生産制御が難しく大量生産が不可能とされてきた。また作るコストもあまりにも高く実用の採算ベースには程遠いことも大きな課題であった。
 
  この単層CNTは、鋼の20倍に相当する高強度の特性のほかに、銅の10倍の熱伝導性、アルミの半分の密度、構造の違いにより導電体と半導体の二つの性質、シリコンの10倍の電子移動度など、今までにない優秀な特性を持っている。天然資源に恵まれない日本にとって原料の心配の要らない素材で、その用途も高強力材料、放熱材料、半導体、導電材料、樹脂・ゴム・フィルムに混ぜることによる導電高分子材料、導電性を利用したタッチパネルなど応用範囲は広い。
 
  この日本で発見された素材をリーズナブルなコストで生産できる技術を開発し、加えて用途開発を促進する目的で一昨年国家プロジェクトがスタートした。その研究開発を実施する組織として技術研究組合「単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)が設立されている。
 
  企業5社と独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)で構成され、単層CNT生産技術としてはAISTが開発したeDIPS法による単層CNT自体の生産制御技術の開発、並びにその素材を繊維化、複合化する技術の開発、加えて同じくAISTで開発されたスーパーグロス法による単層CNTを利用した複合材料の開発などを進めるものである。5年間の基盤研究・用途開発により将来の企業化を目指し、日本の根幹産業の一つにすべく努力が続けられている。発見者の飯島博士もTASCにアドバイザーとして参加している。
 
4.グラフェン
 
  一昨年のノーベル物理学賞はグラフェン発見者に与えられた。グラフェンはCNT、フラーレンと共に同じナノレベルの炭素化合物で、黒鉛であるグラファイトをその一層だけを取り出した平面状のものである。そのグラフェンが球状になるとフラーレン(この発見者もすでにノーベル賞を授与されている)、チューブ状になるとCNTということになる。この3つの炭素化合物は親兄弟関係になる。昨年度からは急遽グラフェンの研究開発もこのTASCで推進することになった。これらナノカーボン生産技術を完成させ、さらに応用展開を成功させれば日本での産業活性化に大きな役割を演じることを期待している。
 
  話はそれるが、ノーベル賞といえば一昨年の化学賞については長年勤めた会社にも在籍されていた根岸英一博士が受賞しこの上なく嬉しく思った。化学賞に与えられたのはクロスカップリング反応であるが、この反応の最初の考案者は偶然にも同じく長年勤めた会社の同僚であった。彼が京都大学熊田・玉尾研究室の大学院修士課程時代に考案したものであったことを知り(詳しくは「有機合成化学協会誌」2000年5月、と日本化学会誌「工業と化学」2011年1月に記載)、身近にノーベル賞級の研究者がいたことに世の中狭いものと感じた。著名な人物以外にも影の第一人者がいるものだというものの見方のよい例の一つと思う。
 
5.福島原発事故
 
  昨年の3月、東北では巨大地震、津波による大災害が襲ったが、さらには福島原発の事故が重大な問題を投げかけている。犠牲になられた方々、今も避難生活を余儀なくなされている方々がおられ本当に残念に思う。地震と津波は自然災害であるが原発事故は人災であるという側面も否定できない。人類は自然現象をうまく利用し世の中の人々の幸福のために役立ってきたが、歴史的に見ると逆に人々を苦しめた側面もあるのも事実である。今回の原発事故もその科学技術の負の側面を露呈したようだ。科学技術開発に携わるものにとって記憶にとどめると共に、常に負の側面も考慮した研究開発もあわせて実施することが重要であることを肝に銘じたいと思う。
 
  アスベストの経験から単層CNTの安全性についても十分な検討が必要で、重要な仕事との受け止め方をしている。単層CNTはアスベストとは異なり剛直ではなく、またカーボンであり、必ずしも同一視できるものではないというのが現在の考え方である。いずれにしも安全性についての研究も重要なテーマとしてTASCではその評価方法などの研究を実施している。的確な測定法の確立と客観的データーによる判断がなされるものと考えている。
 
  あってはならない原発事故が今起こり、福島周辺は通常とははるかに高い放射線に覆われ住民は避難している。福島近辺はこれから長期にわたって放射線の影響を受け、人は云うに及ばず、農産物、畜産物、海産物、土、水、海などすべてのものに影響を与えていくと心配される。
 
  一方、ドイツで1985年に初めて建設されたカルカールプルトニウム高速増殖炉は今、ワンダーランドカルカールという娯楽設備として営業している。この原子炉はチェルノブイリ事故のあと大論争となり、結局完成したが稼動することなく廃炉となったものである。今、ドイツカルカールの人々はこのワンダーランドで楽しみながら自然豊かな田園風景の中で生活を享受していることと思う。対照的な現状である。
 
6.負の歴史から学ぶ
 
  科学技術の発展により人々はその便利さと豊かな生活を享受しているが、一方では多大な負の歴史も作り出し人々を苦しめることも多かった。地震、津波、台風などの災害は人の力ではコントロール出来ないが、戦争、公害、薬害などの人災は人の作り出す悲劇で、人の力でコントロールできるはずである。人災を防ぐ方法はないものかとつくづく思う。
 
  このような負の歴史を作り出す源はパラドックス的詭弁ではないかと考えている。パラドックスとは、「兎が進む間に前を歩いている亀は少なくともわずか先に進み、さらに兎が進む間に亀はまたわずかでも進むので兎は永遠に追い抜くことが出来ない。」という例で代表されるように、論理的には正しく見えるが実際にはありえない論理をいう。
 
  自然科学の分野では論理・議論で決着をつけず実証主義によって決着をつけるのでパラドックス的詭弁は退けられ理論が確立する。しかし、自然科学以外の分野では論理による議論しか出来ない。このため議論の中で傲慢なパラドックス的詭弁が堂々とまかり通る。どんな考え方にもまずは肯定的に議論する、いわゆる「聴く耳を持つ」という土壌があればこのようなパラドックス的詭弁はかなり避けられると思う。
 
  「聴く耳を持つ」ということに加えて、実証主義実践不可能な分野では最後の基準として「人が傷ついたり死ぬことはないか、自然を壊わすことはないか、人のためになっているか」の3原則を基本に具体的な協議体制を構築し、それを民主的に公正に運用することで初めて人災たる負の歴史をなくすることができるのではないかと考える。
 
7.つくばの地
 
  TASCはつくばにあるAIST内に設立されたが、そこから北方を見ると筑波山が見える。その麓に蚕影(こかげ)神社という古びた社がある。その名に蚕という字が入っている通りこの地区が日本養蚕業の発祥の地であると伝えられている。
 
  養蚕業は戦前日本の輸出産業の花形で日本の外貨獲得の源であった。絹糸で出来たストッキングがアメリカ女性の足元を飾りもてはやされていたのである。当時養蚕業は今で言えば自動車産業のようなものであった。この神社には全国から多くの養蚕業の人々が参拝に訪れたという。参道階段の入り口には昔は旅館もあり参拝者が宿泊するなどたくさんの人々で賑わったそうだ。
 
  しかし、デュポン社がナイロンを発明、このナイロンが戦後世界的に普及し日本の養蚕業は壊滅する。いまでは参拝客もなくこの神社は廃墟に近い状況となっている。今はその参道入り口に古びた1軒の民家がありそこでほそぼそと絵葉書などを売っているに過ぎない。
 
  素材の変換はドラスチックに進む。花形産業も新しい商品の出現により消滅する。繊維の世界でも有機合成繊維の時代から、近い将来単層CNTのような新しい素材に取って代わることもあり得る。特に産業資材用途ではその可能性は強い。このつくばの地での単層CNTの研究活動を通じて新しい産業創出に成功し、つくばが新たに単層CNT産業発祥の地といわれるようになってほしいと願っている。
 
8.夢
 
  芥川龍之介は天国と地獄をつなぐ手段として蜘蛛の糸を使った。現実の世界での同じような発想として宇宙エレベーターがある。現在宇宙と地上を結ぶ手段はロケット、スペースシャトルなどあるが多くの人々を運ぶことは不可能である。宇宙エレベーターが出来れば多くの人々が比較的容易に宇宙に行くことができ、宇宙生活も可能になる。この宇宙エレベーターのロープには、この単層CNT製ならば使える可能性を秘めている。宇宙エレベーターを使って一般の人々も宇宙で生活しているという夢物語を思いめぐらし、単層CNTの可能性を求めてもうしばらく毎日を励みたいと思っている。

2012年4月8日日曜日

ギリシャの自然

          エーゲ海とスニオン岬(ギリシャ)              マラトンの丘            エーゲ海とリンドス(ロードス島)

今ヨーロッパで財政赤字からの経済危機に陥っているのがギリシャである。20年ほど前にギリシャの状況について記録を残しているが、その当時にも西欧でありながら後進国のような印象を述べている。

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ローマ帝国が東西に分裂して東に残ったのがギリシャ正教。カトリックと比べて教会は質素で、またキリスト像もない。未だに土葬とのことでアテネでは墓不足とのこと。ロードス島でマツダの三輪トラックが未だ走っているのを見て、EUの経済統合の中でギリシャは今後も経済的にはきびしい状況が続くと感じた。
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しかし財政赤字については他人事ではない。ギリシャの赤字額より日本の方がはるかに大きいのである。日本でも長期保守政権のつけがいよいよにっちもさっちも行かないところに来たようだ。
日本があまり問題視されないのは、工業先進国であり市井の人々が不満を持ちながらも真面目にそれぞれの役割を果たし続けており、いずれ何らかの対応がなされるものと世界がみなしていることに他ならない。真剣な市井の人々の働きに反し国を導くべき政治家のいい加減さを嘆かざるを得ない。今日本で本当に世の中のこと考え実行しているのは市井のNPOなどの人々だけのようである。
大震災の対応も決して迅速ではなく、また原発問題に至っては迷走している。財政危機の現実に対して政治家にはまずは自分達の歳費を返上してでもその方向性を示し、歳出削減という根本的対策を実践することが求められる。まず魁より初めよ、ということで初めて市井の支持がとれるというものである。
与党も野党も自らその姿勢を示すために歳費返上などの提案をすることは皆無である。この事実から見ても政治家、それを目指すものというものは税金泥棒と言わざる得ないといつも思う。
間接民主主義の選挙による議員制度の行き詰まりと限界を露呈しているようだ。今の政治制度を根本的に変える必要があると考えるのは私だけであろうか。その解決法は市井の人々すべてが政治に関与することと考える。現状の選挙制度による方法では市井の意見がなかなか反映しない。
政治家に任せず市井の人々すべてが政治に参加できる体制に変えるのである。その具体的方法は、国会は任期制、再任なしで無作為抽出の方法で各地区から人を選任し国政に関する議論を実施し、利点・欠点などを検討し、最終判断は国民投票で決定する方法である。現在のインターネットの世界ではこのような体制を作ることは容易である。国民の義務として無作為に選ばれた人は基本は無給であるが、その間仕事ができなくなる人には報酬保証は必要と考える。
今政治家を目指す人は世のためと言い選挙に出るが、結局は議員という特権を持つことにより、自分の名誉、利益、利権を優先するということになる。これは与野党共にいえることで、日本という国のみならず世界の政治家にいえる共通の事実ではないかと思う。
ギリシャの経済危機の原因はこのような政治体制の問題点にあるのみならず、根本的にはもう一つ大きな産業が育っていないことも指摘できるのではないか。危機を解決するには新しい産業を創出するという努力も必要と考える。エーゲ海を見渡す素晴らしい自然を持ったギリシャであるが、美しい国土を維持することが大前提であることはいうまでもないが。

2012年3月11日日曜日

ヨーロッパの自然

ライン川(デュッセルドルフ)野生アザミ(スコットランド)
放牧される馬(イタリアサルジニア島)ポーランド平原

あの震災から1年経った。大津波の被害からの立ち直りはかならずしも迅速ではないが一歩づつ進んでいる。それに反して原発事故の今後は依然として不透明のまま、ますますいろんなところで対応の困難さが露わになっている。それにもまして4、5年後にはもっとも心配されている被ばくによる人的被害も現実のものとなるのだろう。ヨーロッパ駐在日記、1993年4月「イースター」に記載した文章を思い出す。
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「・・・・・・・・・・・・・・・・。自然の中では、人の考える事などちっぽけでわがままなもの。自然科学の世界ではこの人のはかない考えを実証主義により常に修正しわがままを押さえることにより、近代の自然科学の成果が得られた。実証主義が認められなければ、未だに人類ははかない論理、わがままな論理、都合の良い論理などに支配され、自然科学の世界は今のような発展はなかっただろう。
とはいえ、自然科学の世界でも人が知り得たのはほんのわずか。自然の神秘はまだ依然として大きい。試行錯誤がずっと続く。人は自然のなかで生きているということを忘れると、いずれ自然の大きな逆襲に会うのだろう。自然とともに生き、自然を守る。ドイツは少なくともそれをしなければならないと努力していることを今回も肌で感じた。」
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自然の逆襲が現実になってしまった。自然が人の愚かさを知らしめているようである。自然の前では人は無力であることを感じる。人類はいい加減に自然から学ばなければならないと思う。

2012年3月3日土曜日

完成した東京スカイツリー


            新仲見世からの東京スカイツリー
2年前(http://tsukubanite.blogspot.com/2010_04_01_archive.html#7931194056098557159)、昨年(http://tsukubanite.blogspot.com/2011_01_01_archive.html)と2回にわたって浅草寺から建設中の東京スカイツリーの写真を撮っている。今年は初詣に来ていないこともあり、本日東京自宅に立ち寄った際、お参り方々完成した東京スカイツリーを今までと同じ場所から写真に収めた。

あいかわらず浅草は外国からの観光客も多くたくさんの人々で賑わっていた。昨年5月にドイツ人が我が家に滞在した時も、東京を案内するのはまずは浅草であった。お参りの後おみくじをトライしたが最初のおみくじは凶。もう一回トライしたがやはり凶。めったにないことでありかえって運があるのではと笑い話の一コマとなった。聞くところによると浅草寺はかなりの確率で凶が入っているとのこと。結構経験されている方がおられるそうである。

この東京スカイツリーを施工したのは大林組。五重塔の芯柱の技術を取り入れ、最新の鋼管技術との組み合わせで完成させたという。昔の匠の技術を生かせるところに日本の奥深い歴史を知る。

大林組といえば先週宇宙エレベーターを2050年までに完成させる構想を発表している。まだまだ夢物語であるが、実現のキーはロープの開発である。現状唯一可能性のある素材はカーボンナノチューブであり、特に単層カーボンナノチューブのロープの開発が期待されている。まだ糸状のものができつつある初期の段階でありその道のりは長い。喜ばしい話が少ない今の日本で元気を出せるプロジェクトとして具体化できないかと夢見ている。